5/9(日) 中村拓志×岸勇希 ぼくらの「コミュニケーションデザイン」に行ってきました。

現代建築家コンセプト・シリーズ6 
中村拓志―微視的設計論』(INAX出版)刊行記念トークショー
ゲスト:中村拓志×岸 勇希
ぼくらの「コミュニケーション・デザイン」


<イベント内容>
建築とはコミュニケーションのデザインだという中村拓志。中村は自らの設計方法を「微視的設計」と名付け、
独自の手法で新たな建築の可能性を切り開く。
一方岸勇希は、電通のコミュニケーション・デザイナー/クリエーティブ・ディレクター。
広告という枠にとらわれることなく、事業デザインから都市計画、コンテンツ・プロデュースに至るまで、
コミュニケーションに関わる様々な分野で活躍している。
このトークショーでは岸が提唱する「コミュニケーション・デザイン」の切り口から、
中村の建築設計手法に迫っていく。

コミュニケーションをキーワードにしてつくられる、人と人、人ともの、人と建築の新たな関係とは。

■ 開催日時:2010年5月9日(日)18:30〜20:30(開場18:00)
■会場:青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山

http://www.aoyamabc.co.jp/10/10_201005/6_inax_59.html
http://yukix.com/memo/2010/04/post-70.html


電通の岸さんは著書を拝読したこともあり、Twitterでフォロー(@yukixcom)もしてます。
#TL見てると、いつ休んでいつ寝てるの?ってほど多忙みたいですがw
コミュニケーション・デザイナーとして広告業界でかなり有名な方ですね。


中村さんの「微視的設計論」刊行記念ということもあり、会場の参加者は建築関係の方々が
多かったようですが、僕は完全に岸さん目当てで参加しました。
もちろん中村さんのお話も大変興味深かったです。


トークテーマは「ぼくらのコミュニケーションデザイン
職種は違えど、ものづくりへのアプローチの仕方が非常に似通っているというお二人。

トーク内容をメモした点を少しだけまとめてみます。(目当ての岸さんよりです。。。)


中村さん:
建築の歴史は、神社、寺院などのように神の教えをいわば広告化してきたように、
実は建築と広告は切っても切り離せない関係にある。


岸さん:
中村さんの「恋する建築」という本を読んで共感し、交流を深めるようになった。
ユーザの気持ちをデザインすると言う点で同業者だと思っている。


岸さんは、コミュニケーションデザインというものを文字通り「コミュニケーションをデザインする」
という以外、定義することはしないようにしているとのことでしたが、
今回の対談のためにあえて一つの定義をするならば以下、とのことです。

(作り手と受け手間の)コミュニケーションによってさらに新しいコミュニケーションを創出すること。
それによってHAPPY(キモチ)をつくること。


重要なのは、「"カタチ"ではなく"キモチ"をデザインする」こと。


ここで、岸さんの最近のお仕事紹介がありました。

  1. シンガーJUJUのコミュニケーション・デザイン

「素直になれたら」のケータイ用PV

※ 個人的にはかなりキュンキュンきたんですけどw


【参考リンク】
http://www.mobileart.jp/award_j/

  • PC 版とは違う、ケータイ用のドラマを作ろうとした。
    • そもそもケータイでドラマなんか見るの?
      • ケータイはテレビとは違いリアルでは他人との関わりを断絶するデバイスである。
      • ケータイデバイスの特性を活かしたコミュニケーション・デザインをする必要がある。
    • ケータイを使ってリアルで人とコミュニケーションを取れないか?
      • ケータイを2つ合わせて1つの動画を再生する。
    • 結果・・・
      • 日本の動画コンテンツ史上最高の600万ダウンロード達成!


上記のプロダクトだけでも素晴らしいなあ、と思ったのですが、特筆すべきは細部へのこだわり。
例えば、

  • 2つのケータイの動画をうまく同期させるのに、Bluetoothが使えるのだけどあえてさせなかった。
    • 2人で「3、2、1、せーの、ポチッ」という行動をさせたかったため。(素晴らしい!)
  • 動画再生中のメール受信機能を切ることはしなかった。
    • 「他の女からメールが着たらコイツ終わるな」みたいな妄想によるものw
  1. iPhone と絵本を組み合わせた「PhoneBook」


【参考リンク】
http://www.mobileart.jp/phonebook.html

  • デジタルは本当に人をHAPPYにしてるか?いや、デジタルは全てを補えない。
    • 例えば、kindleiPAD電子書籍端末が台頭してきているが、「本をめくる」という行為は補えていない。
  • コンセプトは「analog on the technology」
  • CommunicationDesignとはEmotionをデザインすること。


このプロダクトにも細部へのこだわりがあります。
例えば、

  • 今見ている絵本の内容にあわせてiPhoneに風景を出力させる技術もあったが、あえてしなかった。
    • 子供の自由な発想を阻害しないため。
    • 別に電車の場面で窓の外が宇宙だったっていいじゃん!

ただ、本当にやりたかったことは、、、

  • この本を読んでいる子供がフランスにイタリアに〜人いて〜というものを可視化させたかった。
    • squid soap
      • ハンドソープケース。ソープを出そうとノズルを手の平で押すと黒インクがつく。子供が手を洗い終わる目安になる。出るインクの量は綿密な計算に基づいて設計されているらしい。 http://ow.ly/1ILvO
    • A Blind Call
      • 誤操作でかかってしまった電話の通話料を寄付へと発想するキャンペーン。サービスの電話番号をA Blind Callの名で登録するだけで参加可能。うっかり電話は電話帳の最初の文字にかかる事が多いためABC。 http://ow.ly/1ILwH
    • iPod
      • iPodの背面をつるつるにしているのは、わざと汚れやすくするため。指紋などで汚れる→指紋を拭く→ユーザ自身のプロダクトとして愛着を持つ。というキモチの導線設計をしているらしい。(知らんかった。。。

この対談を聴いていて印象に残ったのが、お二人ともものづくりの態度がユーザの気持ちを中心に考えている、ということ。
もちろんテクノロジーを出発点として取り組む企画もあると思うけど、中心に据えるのはユーザの気持ちと、それがどう動くのかをきちんと設計すること。
そして、そのために細部へ強くこだわる。

口で言うのは簡単だけど、実際にローンチさせてキャンペーンとして、プロダクトとして成功させるのはかなり至難だと思います。
他の誰より思考して思考して思考し尽くさないといけないのは想像に難くない。。。

お互いを変態だと褒め合ってた(?)のは、日々の妄想力のスゴさをよく知っているからなんでしょうね。

面白かったです。
これで500円は安すぎ!

岸さんのスライドの「思考のプロセスとスケール」という図をスケッチしたんだけど自分でもよく理解してないし出しちゃダメな気がするんでこれは非公開で。